<本>「水のなまえ」(著者:高橋順子)
「水」の色々なあり方を、古今様々な詩歌を用いて透かして読み込もうとする一冊。
雨に関する表現の多様性や、水にまつわる様々な神話が整理されているとともに、詩歌での実際の用例も紹介されている点が面白い。
幾つか共感された詩歌を挙げると、一茶の「露の世は露の世ながらさりながら」は、非常にシンプルながら、2歳の娘を失った無念さが強く表現されている。
また、牧水の「かんがへて飲みはじめたる一合の二合の酒の酒の夏のゆふぐれ」などは、酒飲みなら共感せざるを得ないものであろう。
こうした水にまつわる名作が紹介されている点は素晴らしい一方、所々で原発が云々と書かれているのは、折角詩歌の世界に浸りたいと思っている心からすれば、やや興醒めであると言わざるを得ない点は残念。
また、作者自身が詩人なので仕方ないといえば仕方ないが、最終章の殆どを占める、自身の旅と、その最中で作った作品については、失礼を承知で申し上げれば若干の蛇足感が否めない。
上記2点を割り引いて読めばそれなりに面白い一冊。