読んだもの・食べたものの防備録

<本>「『この国のかたち』を考える」(編者 長谷部恭男)

面白いテーマで学術俯瞰講義をやってるなーと思って購入。

加藤御大や、「日比野(勤)と梶浦(由記)は神」とかつて喝破された宍戸御大等、興味をそそられる名前も並んでいたので。

 

いくつも重要な示唆は散りばめられているが、時宜にかなったテーマということで、集団的自衛権に関して少し気になったことを。

解釈改憲の危うさそのものは、長谷部先生のご指摘の通りだとして、仮に戦争により破壊を企図する対象を憲法原理だとした場合、自国Aと趣旨を同一にする憲法原理を有する国家Bが、異なる憲法原理を旨とする国家Cと戦争状態に陥った場合、AがBを防衛する行為は、どのように整理すべきなのか。

憲法原理の護持、という観点に立つと、そのような場合も自国Aの自衛権の範囲内としておかないと、国家の根幹を成す憲法原理を守る上での実効性が担保されないことが懸念されると思うのですが。

 

いずれにせよ、「解釈」上、いわゆる「集団的自衛権」を憲法9条は認めてこないと整理してきており、その妥当性は兎も角、それがある程度共有された(されてしまった)以上、本書の趣意に沿えば、集団的自衛権を認めるべきとする一定の共通理解を醸成した上で、「憲法典」としての憲法改正を行うことが、憲法がその根本規範たる所以を担保することにも資することには違いない。解釈改憲の危うさ(特に政権交代の恐ろしさは、民主党政権への交代がかつて実現したことにより、現実にありうる懸念として表面化している)を踏まえてもまた然り。

 

非常に読みやすく纏められており、広く勧め易い一冊。

 

「この国のかたち」を考える

「この国のかたち」を考える